2021年 第2四半期
2021年Q2 イーサリアム 分散型金融エコシステム
このレポートについて
2021年第2四半期は、多くの金融アナリスト、メディア、政治家、起業家 が、「DeFiとは何か、何に役立つのか?」という問いかけが起こりました。これまでのConsensysDeFiレポートでは、 ステーブルコインの台頭 、分散型取引所や自動マーケットメーカー の仕組み、借入・貸付プロトコルの原動力となる 新しいタイプのDeFi資産 などを取り上げてきました。仮想通貨が登場してから10年近くは、中央集権的なサービスに頼る必要がありました。例えば仮想通貨を購入でき、仮想通貨の保管も行う取引所や、ボラティリティの高い仮想通貨を米ドルに交換するサービス、レバレッジ取引関連のサービスなどです。DeFiは、分散型の通貨には分散型のサービスが必要であるとの考えのもと、重大な矛盾の解決に乗り出しました。資産へのアクセス制限や資産凍結のリスクがあることを知りながら、資産の保管を企業任せにするという状況は変える必要があります。すでに MetaMask のようなセルフホスト型(自己管理型)ウォレットを使用しているのであれば、取引、借入、貸付、クラウドファンディングを中央集権型のアプリケーションに頼る必要はありません
概要
イーサリアム上に構築されるDeFi経済圏では、ステーブルコイン、DeFi資産、DeFiローンの成長や、金融サービスがイーサリアム上で提供される場合に消費者が入手できる、透明性の高いデータの種類について分析を行っています。
今日のDeFiの多くは、リスクを受け入れ、自らの資産を保管・管理できるパワーユーザーのコミュニティを対象としていますが、リスク管理、資産の保管、コンプライアンス、レポーティングといった機能を提供する新サービスの出現を目にする機会も増えています。機関投資家がDeFiに注目し始めている経緯では、DeFiへの機関投資家の資金流入を促す新しいタイプの企業やサービスを分析しています。
主要なDeFiプロトコルのほとんどが、トークン保有者によって借入・貸付に使用され、かつ管理されています。主要な DeFiのガバナンス に関する投票と、それが投票参加者の利益創出に果たす意義について説明します。
DeFiのスケーリングの項では、イーサリアムと互換性のあるスケーリングソリューションについて取り上げ、それらが新たな手法を用いて、高額なガス代やスループットの限界などイーサリアムが現在抱える制約をどのように解決しているかを説明します。イーサリアムと互換性のある新しいタイプのレイヤー2プロトコルやサイドチェーンが市場に登場するにつれ、DeFiの活動もこれらの新しいネットワークに移行し始めています。
イーサリアム上に構築されるDeFi経済圏
2021年7月1日現在、イーサリアムのユニークアドレス数は1億6,000万件, で、2021年第1四半期末から10%増加し、年初からの12%成長と比べるとやや減速傾向にあります。
第2四半期末までに、291万件のユニークアドレスが少なくとも1つのDeFiプロトコルを使用しており、第1四半期と比べて65%の伸びを示しています。コミュニティが主体となった教育、シンプルなUI、魅力的な利回りとともに、そしてDeFiのベストプラクティスに関する一般の認識が第2四半期を通じて高まったことを受け、新規アドレスの件数も増加しましたが、MetaMaskのようなウォレットでは、複数のアカウントを簡単に作成できるため、アドレス数とユーザー数が単純に1対1で対応するわけではないことに留意する必要があります。増加数はかなりのものですが、アクティブなDeFiアドレスはイーサリアムの全アドレスの1.81%に過ぎません。
イーサリアムの総アドレス数と、DeFiプロトコルとのやり取りのあるアドレス数の比較。出典:Dune Analytics @rchen8, Etherscan DeFiプロトコルには Uniswap, Compound, 1inch, SushiSwap, Balancer, Kyber, MakerDAO, Aave, dYdX, Curve, Tornado Cash, InstaDApp, Yearn, 0x, Bancor, PoolTogether, Synthetix, Ren, Harvest Finance, CREAM, Nexus Mutual, KeeperDAO, Hegic, Alpha Homora.
DeFiの利用状況を測るもう1つの指標は、イーサリアムの代表的なノンカストディアル(自己保管型)ウォレットであるMetaMaskの月間アクティブユーザー数です。2021年6月1日までに、MetaMaskの月間アクティブユーザー数は800万人を突破しています。これは、BSCやPolygonなど、ユーザーがMetaMaskを介してアクセスできる他のイーサリアム仮想マシン(EVM)互換ネットワーク上で、DeFiアプリケーションが成長していることが一因です。このデータについては、DeFiのスケーリング の項で詳しく説明します。
ステーブルコインの供給は、2021年第2四半期にも急速なペースで増加しており、現在の発行総額は約650億米ドルで、2021年第1四半期末から60%以上増加しています 2021年第1四半期のDeFiレポート では、さまざまな種類のステーブルコインと、それらがどのようにUSドルや他の法定貨幣との等価性を保つのかについて書いていますので、お時間があればお読みください。
イーサリアムにステーブルコインが登場した時、イーサリアムのステーブルコインの中で最大の割合を占めていたのがUSDT(Tether発行)でした。現在Tetherがイーサリアム上のステーブルコイン市場全体に占める割合は48%で、2021年第1四半期末の約58%から減少しています。CentreConsortiumが発行するステーブルコインUSDC は、裏付け資産として銀行口座に米ドルが保管されています。USDCの保有者は、Coinbaseなどの取引所で、いつでも無料でUSDCを米ドルに交換することができます。Tetherは今四半期に、同社の資金の49%が詳細不明のコマーシャルペーパーで裏付けられていると明かしたばかりで、同社の裏付けに対する不信感が、DeFiユーザーがDeFiプロトコルでUSDCやDAIを好むようになった理由の1つかもしれません。MakerDAO、Compound、AaveなどのDeFiレンディングプロトコルは、USDCの供給量の約23%を保有しています。
イーサリアムのステーブルコインの発行額。出典:Dune Analytics @danner_eth ステーブルコインの発行者は以下の通り: Tether USDT, USD Circle, True USD, Paxos Standard, Binance USD, HUSD ETH Price Q2 2021 from ethereumprice.org (April 1 to June 30)
MakerDAOのDAIやCentreのUSDCのようなステーブルコインは、初期のDeFiを支える偉大な基盤であるだけでなく、仮想通貨市場のボラティリティをヘッジする手段でもあります。ETHと他のERC-20トークンやステーブルコインとのスワップは、ユーザーがMetaMask Swapsを通して最も頻繁に利用する取引ペアの1つです。
ステーブルコインは、ETHその他のトークンを中央集権型取引所で法定通貨に変換することなくボラティリティをヘッジできるだけでなく、借入や貸付といったDeFiの他の基本機能を支える構成要素でもあります。DeFiの債務残高は100億米ドルから増加し、5月中旬には史上最高の180億米ドルに達しましたが、ETHをはじめとするERC-20の資産価格が暴落し、 5月18日には新記録となる3億6,200万米ドルの決済が行われました。
DeFiローン残高。出典: Dune Analytics @hagaetc
分散型取引所
分散型取引所 (DEXs)、自動マーケットメーカー、トークンスワップアグリゲーターは、中央機関なしで運営されている仮想通貨取引所の種類を技術的に説明したもので、ユーザーはピアツーピアで取引を行い、自分の資金を管理することができます。
第2四半期に上場した人気の仮想通貨取引所Coinbaseは、S-1(目論見書)の中で、分散型取引所を自社ビジネスに対する主要な脅威の1つに挙げています 。それもそのはずで、2021年第2四半期のDEXの取引高は過去最高となり、5月だけで1,730億米ドルという驚異的な取引高を記録し、第2四半期の合計は3,430億米ドルに達しました。これは、2021年第1四半期のCoinbaseの総取引高である3,350億米ドルを上回っており注目に値します。というのも、DEXでは取引できるのはEVMに対応した資産のみであるのに対し、Coinbaseの取引の58%はビットコインであるからです。
プロジェクト別のDEXの取引高。出典: Dune Analytics @hagaetc
なぜDEXの第2四半期の取引高とCoinbaseの第2四半期の取引高を比較しないのか、と疑問に思われるかもしれません。その問いに答えることで、分散型取引所のもう1つの優位性が明らかになります。すなわち、DEXはイーサリアム自体にスマートコントラクトとして展開されているため、Dune Analyticsのようなオープンソースのサービスを使って、すべてのリアルタイムデータが閲覧可能です。他方、Coinbaseでは(そして実際、大半の財務報告では)、ユーザーは企業によるデータ開示を待つ必要があるのです。現在、分散型保険プロトコルのNexus Mutualのような企業は、DuneAnalyticsを使用して、総供給量、保障コスト、保険金請求額、収益などの財務状況を リアルタイムで公開するダッシュボード を運用しています。データをリアルタイムで公開し透明性を確保することは、イーサリアムベースのDeFiの重要な差別化要因となるだけでなく、大きな優位性にもなっていくと予想されます。
第2四半期のDEXにとって重要な出来事の1つは、Uniswapの3つ目のバージョンであるUniswap V3の展開が始まったことです。DEXの取引高に占めるUniswapの市場シェアは、第2四半期を通じて60%から74%に拡大しました。Uniswap V3の大きな変更点は、資本効率の向上が図られたことで、ある資産が取引される可能性が最も高い価格帯に資金を集中させる仕組みとなっています。イーサリアムのスマートコントラクトは永久的なものであるため、引き続きUniswap V1やV2の使用は可能です。現在、流動性供給の金額ではUniswap V2が上回っていますが、取引高ではUniswap V3が上回っています。これは、資本効率に対するこの新しいアプローチが、様々な資産ペアのベストプライスをユーザーに提供するために上手く機能している証拠です。
Uniswapの取引高:V2 vs V3。出典: The Block
Uniswapでロックされている金額V2 vs V3。出典: The Block
トークンスワップの仕組み
トークンスワップは、DeFiエコシステムの主要な構成要素となっています。DeFiエコシステムには、MetaMaskに組み込まれたスワップアグリゲーターをはじめ、分散型取引所や自動マーケットメーカーのUniswap、SushiSwap、Curve、1Inchなど、他にも多数のサービスが存在します。スワップを実現するための基本的なコンセプトやコードを、読者の皆様にざっくりご覧いただくことが重要だと考えています。ここでは、イーサリアム財団ERC20チュートリアル、, OpenZeppelin ERC20トークン規格 and Uniswapスマートコントラクトに基づいたコードスニペットを見てみましょう。
なぜこれが重要なのでしょうか?他のDeFiレポートやConsensysのブログでも紹介した通り、イーサリアムは透明性が高く、ユーザーがやり取りを行うDEXやAMMの原動力であるスマートコントラクトのコードを調べることができます そして、あの怪しいスーパーコーダーたちの活動をチェックしてみましょう。透明性を求める以上、ユーザーには何が起きているのかをしっかりと理解するためのリテラシーとツールが必要になります。私たちは、読者のためにそれをこの場で実践したいと考えています。このコードの役割についてのリテラシーを身につけることで、分散型エコシステムがどのように機能しているのかが見えてきます。本項の内容に興味を持ち、スマートコントラクトの読み書き方法についてさらに学びたいと思われた方には、Consensys Academy Blockchain Developer Program 2021へのお申し込みをお勧めします!
トークンスワップとは何か?ここでは、ERC-20トークン規格に準拠した代替性トークンの交換をトークンスワップと定義します。トークンは、別のERC-20トークンとの交換を通じて、1つのアドレスから別のアドレスへと移動されます。このようなスワップの例としては、Wrapped Bitcoin(WBTC)とDAIの交換が挙げられます。スワップという言葉は、ETHからERC-20トークンへの交換や、その逆の場合にも使われます。例えば、ETHとUSDTのスワップなどです。
Hover over the code to get a brief explanation of what it does.
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{
require(numTokens <= balances[msg.sender]);
balances[msg.sender] = balances[msg.sender].sub(numTokens); balances[receiver] = balances[receiver].add(numTokens);
emit Transfer(msg.sender, receiver, numTokens);
return true;
}
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{
require(from != address(0));
_allowed[msg.sender][spender] = numTokens;
emit Approval(msg.sender, spender, numTokens);
return true;
}
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{
require(numTokens<= _balances[from]);
require(numTokens <= _allowed[from][msg.sender]);
require(to != address(0));
_balances[from]=_balances[from].sub(numTokens);_balances[to]=_balances[to].add(numTokens);
_allowed[from][msg.sender] = _allowed[from][msg.sender].sub(numTokens);
emit Transfer(from, to, numTokens);
return true;
}
あるERC-20トークンを別のERC-20トークンにスワップするには(このケースではWBTCをDAIと交換)、次のような流れになります。WBTCを保有している外部所有アカウント(EOA) → WBTCトークンがルータースマートコントラクトに移動 → ルータースマートコントラクトが特定の取引所でトークンの交換を実行 → DAIを元の外部所有アカウントに戻す今回検証するのは、transfer、approve、transferFromの3つの関数です。Transfer 関数とは、ERC-20を所有しているアドレスから、ERC-20を別のアドレスに送信できる関数です。トークン保有者がトークンの移動を別のアカウントに委任する場合、トークンを移動するには、approve と transferFromを組み合わせる必要があります。Approve 関数を使用すると、トークン保有者は別のアドレスに対し、一定の許容量(allowance)の範囲内でトークンの移動を許可することができます。 許容量 とは、その別のアドレスがトークン保有者の残高から移動できるトークンの数を意味します。トークン保有者ではないアドレスがトークンの移動を開始する場合、1つのアカウントから別のアカウントにトークンを移動できるようにするには、approve関数が必要です。TransferFrom 関数は、資金移動を許可されたアドレス(EOAまたはコントラクト)によって呼び出されます。したがって、トークンをあるEOAから別のEOAに移動するために使用できます。また、Smart Contract Account(スマートコントラクトアカウント)から呼び出して、トークンを当社アカウントからRouter Smart Contract(ルータースマートコントラクト)などに移動することも可能です。TransferFrom関数は、トークン保有者の代理でトークンを移動することを許可されたアカウントによりトークンの移動が開始され、移動できるトークンの許容量が事前定義されている点を除いて、transfer関数と同じです。MetaMaskでスワップする利点の1つは、このUXではapproveとtransferFrom関数の両方が抽象化されているため、1回のボタンクリックで両方の機能を使え、より優れたユーザー体験が実現している点です。
機関投資家がDeFi(分散型金融)に注目し始めている経緯
提示されたデータと分析結果を見れば、金融システム全体が、より高い安全性、透明性、プロトコル間の互換性を念頭に、第一原理の部分から再構築されている最中だと言っても過言ではありません。
金融の世界の抜本的なイノベーションと成長は、すばらしい投資リターンと機会をもたらし、この分野に流入する機関投資家の資金も右肩上がりとなります。 Codefi Compare というツールを使って、従来の金融機関と利回りを比較してみてください。レンディングプロトコル「Aave」でUSDCの流動性を供給した場合、年換算利回りは6.27%、サービス開始以来の平均利回りは7.22%となっています。AaveでsUSDの流動性を供給することで得られる利回りは32.5%に達するなど、各プロトコルが流動性を追求する中で、魅力的な利回りがますます標準的になりつつあります。
各種レンディングプロトコルにおけるDAIの利回り。出典: Codefi Compare
これらのレンディングプロトコルの多くは、登場からまだ数年しか経っていません。世界各国の法体系の中で、既存の規制構造を新しいロジックにいかに適切に対応させるかについては未だ検討中ですが、各種の新サービスが、これらのプロトコルへの機関投資家の資金流入を促す上で重要な役割を果たし始めています。一般的に、金融機関の規模が大きくなれば、コンプライアンスや規制に関する監視、報告、監督の要件も厳しくなります。DeFiが中小規模の暗号資産ファンド(運用資産残高10億ドル未満)で早期に採用された背景には、このような理由があります。
抜群の投資リターンを得るチャンスに突き動かされ、また規制やコンプライアンスの観点からも可能であることから、より規制の厳しい機関投資家がこの分野に参入してきています。PWC(PricewaterhouseCoopers)のレポート によると、伝統的なヘッジファンドマネジャーの47%(運用資産残高1,800億ドル相当)が、暗号資産への投資を検討しています。 Intertrustの調査 では、ヘッジファンドは5年後には資産の7%、3,120億ドルに相当する仮想通貨を保有すると予想されています。投資会社は間違いなくDeFiの導入において先行するでしょう。しかし、これらの企業やその他の大規模で規制の厳しい機関が深い谷間を超えるためには、そのために必要なDeFIインフラの構築が必要です。楽しみなことに、市場ではまさにそうした動きが進んでいるのです。
預かり資産の規模は、Coinbaseだけでも 900億ドル超となっている一方、Bitgoのような純粋な機関投資家向けのカストディアンも少なくとも160億ドルの資産管理 を行っています。Geminiの預かり資産は 300億ドルを超え、Fireblocksのようなカストディアンテクノロジー企業の送金額は 1000億ドルを超えています。 コンプライアンス、取引データ分析の分野でも、機関投資家が仮想通貨にアクセスできる基盤を構築・拡大するための資本が集まってきています。
構築が進んでいるのはDeFi周辺のツールやインフラだけに留まらず、機関投資家にアクセスを提供するためにDeFi自体の革新も進んでいます。例えば Aaveの許可制プール のように、認証された参加者(KYC法準拠)のみがオンチェーンの資産管理にアクセスできるようにしたプライベートレンディングプールがあります。CompoundFinanceでは最近、機関投資家が年4%の固定利息を得られる新商品 Compound Treasury の発売を開始しています。 Currentなどの大手フィンテック企業では、すでに自社製品へのCompound Treasuryの統合を開始しています。MEV(マイナー抽出可能価値)の問題点の解決、最良執行のプロトコル作成、分散型アイデンティティの仕様の検討など、機関投資家に焦点を当てたプロジェクトがますます存在感を増しています。
Consensysは今期、MAU(月間アクティブユーザー数)800万人を超える業界で最も実績あるウォレット「MetaMask」を支える技術を活用し、機関投資家向けのウォレットMetaMask Institutional, を発表しています。MetaMask Institutionalを使用することで機関投資家はDeFiにアクセスできるだけでなく、社内ファンドマネージャーによる資金の流用などを防ぐセーフガードの構築を可能にしています。MetaMaskInstitutionalでは資産の移動に必要な内部関係者の数を設定できるため、ファンドマネージャーによる不正行為や全資産の盗難を防止することができます。
さらに、MetaMask Institutionalには Codefi Compliance という堅牢なアドレス追跡システムも搭載されており、カストディアンは、プール内での不正行為が疑われるアドレスを効率的に特定できます。多くのファンドがDeFiへの参入を希望しているものの、自身の資産と提供元未検証の資産を混在させることに法的な問題があると感じており、参入が叶わないという課題があります。このような問題は通常KYCで解決されますが、DeFiのプロトコルはオープンかつ分散化されているためKYCを採用しておらず、プロトコルを代表としてKYCを実行する中央機関が存在しません。
DAOの活用
DeFiのプロトコルやサービスの継続的な成功に伴い、プロトコルガバナンスの手段としてDAO(分散自律型組織)が勢いを増しています。DAOの数はゆうに数千 に上り、様々なイニシアチブや新規プロジェクトに充当できる多額の財源を管理しています。
事実、上位20のDAOのみで 60億ドル 以上のデジタル資産を保有しています。CompoundやUniswapのような有名なDeFiプロジェクトが最大のDAOを管理する一方、 Bankless などのメディア組織、 Alex Masmej’s, to などのソーシャルトークンコミュニティ、 Gitcoin — などの公共財資金調達団体など、その他数千ものプロジェクトがDAOを利用して財務面の調整、統制、管理を行っています。仮想通貨の世界では現在、 190,000 DAO メンバーが存在します。
1,100を超えるDAOがガバナンスにSnapshotを利用している。出典: Snapshot
DAOの資金
DAOの成功の大きな要因となっているのが、こうした新しい組織構造を支えるのに必要な機能を提供するツールや開発エコシステムの登場です。当社のCorbin Page が、そのエコシステムをまとめた素晴らしいインフォグラフィックを作成してくれました。
現在では、DAO向けのトークンサービス、ガバナンス、財務管理、リスク管理、成長、コミュニティ、運営、開発などに特化したプロジェクトも登場しています。仮想通貨プロジェクトが成長を続けガバナンスが分散されていく中、DAOの重要性はさらに増していくことが予想されます。現在では多くのプロジェクトがDAOの構造を持っているものの、依然として少数の投資家と初期プロダクトの開発メンバーが支配するケースが多くなっています。
今後は、コミュニティ内の主要なステークホルダー間で本当に意見の相違が生じ アクティビスト(物言う株主.のような投票運動によってしか解決できなくなった場合に、DAOの存在意義がより高まっていくでしょう。DAOの主要なステークホルダー間で真の意味で意見の相違が生じるまで、引き続きDAOの現状の問題点 を指摘する当事者は、Chris Blecのような批評家のみであると考えられます。
DAOにおけるDeFiのガバナンス
現在、主要なDeFiプロトコルに加えられる変更はガバナンスが原動力となっています
トークン保有者は提案に対して投票することができ、その内容はプロトコルの資金配分から、さらに具体的な内容にまで多岐にわたります。例えば、Compound Financeで、ある資産を担保として差し出す際に借りられる金額を決定する担保掛目を変更するといった内容です。ガバナンスの最新情報を追っていくことで、ユーザーは、DeFiプロトコルの今後の大きな変化を確実に知ることができます。
Synthetix様々なプロトコルの中でも、Synthetixのガバナンスは最も活発です。差出担保に基づく合成資産の生成に関する各種パラメータを変更する複数のアップデートが毎週、常に行われています。また、Synthetixではプロトコルで合成資産を発行する際の手数料も頻繁に変更しており、市場のボラティリティを理由に基準担保率を下げることを選択しています。さらにSynthetixは、米国株価指数など、ユーザーが合成資産の作成に用いることができる新しい資産をガバナンスプロセスを通じて手動で承認しています。今期の主な変更点は以下の通りです。
オンチェーン提案SCCP-127: 基準担保率を500%から450%に引き下げ
オンチェーン提案 SIP-132: L2ショート
オンチェーン提案 SCCP-116: ETH担保ローンの発行手数料率を50bpから25bpに引き下げ
オンチェーン提案 SCCP-99: ローンとショートの上限を9000万sUSDから1億1000万sUSDに引き上げ
オンチェーン提案 SCCP-103: ETH担保ローン発行手数料率を2%に引き上げ
On-Chain Proposal SIP-139: Allow owner to reset the decentralized circuit breaker pricing
オンチェーン提案 SIP-125: 米国株価指数ETF、S&P、NASDAQ、ラッセルの追加
On-Chain Proposal SIP-136: SIP 136: Debt Cache Adjustment
オンチェーン提案 SIP-117: L2で合成資産の取引をサポート
オンチェーン提案 SIP-115: SIP 115: 合成資産sMSFT の追加
AAVESynthetixはDeFiでも有数の活発なガバナンスシステムを提供していますが、Aaveのガバナンスは通常、流動性不足(ショートフォール・イベント)に備えて搭載されている「Aave セーフティーモジュール」と呼ばれる保険システムの更新など、より大きな提案を扱っています。さらにAaveは、Aave V2に仮想通貨担保型のステーブルコインRaiを追加することを可決しました。以下は前期における主な変更点です。
オンチェーン AIP 22: Aave V2 へRaiを追加
AirswapAirSwapトークン保有者は、改善のための提案を作成し投票することで報酬を獲得できます。投票後、参加者は集められたプロトコル手数料のプールから投票の重みに比例した請求を行うことができます。第2四半期には、無駄のないシンプルで安全な取引を実現するため、洗練された新しいトークン取引サイトの作成とAirSwapウェブプロパティの新しいビジュアルスタイルが提案され、承認されています。また、分析ダッシュボードの作成や技術的な改善など、提案書の作成や投票以外の追加的な活動を評価する報奨金システムも可決しています。その他にもコミュニティは、各メンバーが一緒に作業をした貢献者に対して貢献度に基づくポイントを割り当て、各エポックの終了時に報酬が支払われるガバナンス「サークル」を作ることを可決しています。
AIP 30: Web app
AIP 29: 報奨金
AIP 38: AIPの共同作成者を報奨するガバナンスサークルの作成
AIP 26: 手数料トークンプールの統合
AIP 37: ステーキング参加者向けの手数料割引
AIP 29: Bounties
UniswapAaveと同様、Uniswapのガバナンスプロセスはそこまで活発ではありません。強固なガバナンスが欠如している理由としては、提案の可決に4000万UNIの支持が必要であることと、250万UNIを保有しているユーザーにのみ提案提出が認められていることが挙げられます。とはいえ、Uniswapでも提案提出要件の250万UNIへの引き下げ、そして規制当局や政治家にDeFiの利点についての啓蒙を行う新しいDeFiロビー活動組織への資金提供という2つの提案が可決されています。
YearnAaveやUniswapと同様、Yearnのガバナンスもそれほど活発ではありませんが、先月はプロトコルのガバナンスプロセスに大きな変更が加えられました。さらに、Yearnの戦略により生成されたエアドロップの配布方法をどのチームが決定するかについてパラメータが設定されました。また、マルチシグ署名者の変更を提案し、プロトコルの新しいガバナンス構造も可決しています。マルチシグ署名者はプロトコルの評議員のようなもので、日々の業務の管理は行いませんが、重要な決定事項を承認します。前期の主な変更点は以下の通りです。
CompoundSynthetix同様にCompoundもガバナンスが非常に活発なことが特徴です。主な変更点として、繰り返し更新される新しいガバナンス・スマートコントラクトへの移行、LINKなどの新しい資産のサポート、ユーザーが投票前に提案を確認できる日数(すなわち提案に対する実際の投票期間)の延長などが挙げられます。その他にも、これまでCoinbaseを中心に利用していたオラクルシステムをChainlinkのオラクルネットワークに変更しました。また、CompoundはcTokenの基準を更新して決済額の2.8%をcTokenの準備金に回すことで、プロトコルを債務超過に陥らせるような連鎖的な決済リスクを低減しています。先月の主な変更点は以下の通りです。
DeFiのスケーリング
4月1日から6月1日にかけてガス代の中央値は大きく変動し、ピーク時には100Gweiから300Gweiまで上昇しています。
どのDeFiユーザーにとっても、ガス代が300Gweiになるのは避けたいシナリオですが、ETHの価格が下落し、ユーザーが強制決済を避けるためにDeFiのレンディングプロトコルとのやり取りを急いだ5月18日、ガス代の合計が100米ドルを超える事態が発生しました。6月以降のガス代の中央値はかなり低い30 Gwei前後で推移し、単純な送金で1.33ドル、Uniswap取引であれば12.65ドルとなりました。なぜこのような格差が生まれるのでしょうか?
イーサリアムのガス代中央値(出典: Dune Analytics @kroeger0x)
Growth of Transactions on 2021年第2四半期までのイーサリアム、Ethereum, BSC, and Polygon の取引数の増加出典: Etherscan, BscScan, PolygonScan
2021年第2四半期におけるイーサリアム、 BSC, and Polygon の取引数の増加出典: Etherscan, BscScan, PolygonScan
レイヤー2技術は、イーサリアム上での取引にかかるコストと時間を劇的に削減することを目的としています。現在15以上の重要なEVM対応スケーリングプロジェクトがあり、ネットワークがレイヤー2なのか、サイドチェーンなのか、あるいはコミットチェーンなのかといったところで、用語の混乱も生じています。そのため、ユーザーが適切なレイヤー2プロジェクトを検討し、プロジェクトが失敗する可能性を理解できるようなフレームワークを作成しました。
イーサリアムでレイヤー2ネットワークを使用するにはいくつかの手順があり、まずETHやUSDCなどの資産を「ブリッジ」を使ってレイヤー2ネットワークに移動させ MetaMask 上でネットワークをEthereum Mainnetから使用したいレイヤー2ネットワークに切り替える必要があります。
PolygonのPoSネットワークブリッジにロックされた資産。出典: Dune Analytics @nascent
この手順の各段階で、安全でないブリッジに資産をロックしてしまったり、ネットワーク混雑時に資産を引き出せなくなるリスクが生じます。以下のグラフが示すとおり、ユーザーがさまざまなネットワークを試したり、似たような行動をとるユーザーがさまざまなネットワーク間で資産を移動させたりすることで、レイヤー2ブリッジにロックされた資産の価値は変動します。
Optimismでロックされた資産の総額。出典: L2 Beat
Arbitrumでロックされた資産の総額。出典: L2 Beat
Aztecでロックされた資産の総額。出典: L2 Beat
機関投資家および仮想通貨関連企業向けのDeFiソリューション
MetaMask Institutional は、最も信頼・使用されているウォレットを通じて、機関投資家にDeFiエコシステムへのアクセスを提供します。ファンドは、MetaMaskインターフェースを利用することでトークンを簡単に交換、貸し借り、投資し、DeFiプロトコルやアプリケーションと直接やり取りすることができます。インターフェースがアップグレードされ、エンタープライズ向けのセキュリティ、運用、レポート機能が追加されており、プロフェッショナルなDeFiエクスペリエンスを支えます。機関投資家は、MetaMaskInstitutionalを利用することで、ネイティブ統合、エンタープライズグレードのセキュリティ、堅牢なコンプライアンス機能を備えた豊富な分散型アプリケーションにアクセスし、組織のワークフローに合わせた安全で効率的なプロセスを構築することができます。
Codefi Staking を利用することで、機関投資家はバリデータ用インフラの整備やETH管理の第三者への委託といった複雑なプロセスを経ることなく、ETHをステーキングすることができます。当社は、技術的なリスクを大幅に削減し、運用を最適化して獲得できる報酬を増加させます。また、最高クラスのバリデータキーとトランザクションセキュリティ機能を利用し、効率的なバリデータ管理を実現します。取引所、ファンド、カストディアンといった初期のステーキング参加者は、年平均9.9%の利回りを生み出しています。
Codefi Activate は、アプリケーション開発、ネットワークの立ち上げ、コミュニティの成長、トークンの販売、ネットワークガバナンスを通じて分散型ネットワークを支えます。当社は、InfuraまたはQuorumのインフラ、Truffleの開発ツール、Diligenceのセキュリティ監査、MetaMaskを通じたDeFiへのアクセスなど、 Consensys製品スイートを活用して分散型アプリケーションの構築と強化を支援します。Codefiはこれまでに、 SKALEのトークン販売の促進、Eth2デポジットローンチパッドのデプロイ、FilecoinのストレージプラットフォームとDeFiブリッジの構築、AirSwapの新しいガバナンスモデルの管理を支援してきました。
仮想通貨取引所と取引所アグリゲーターは、大量のリクエストに対応するためのスケーリング機能に加えて、このデータにアクセスするための信頼性の高いインフラを必要とします。Infura APIスイート 仮想通貨取引所と取引所アグリゲーターは、大量のリクエストに対応するためのスケーリング機能に加えて、このデータにアクセスするための信頼性の高いインフラを必要とします。